『うらみちお兄さん』は、朝の子ども向け番組「ママンとトゥギャザー」の明るい笑顔の裏側を描く作品である。そこでは、疲れ切った大人たちが、どれほど消耗していても、明るい声を出し、優しく振る舞い、大勢の未就学児を楽しませ続けなければならない。物語の中心にいるのは、元体操選手の31歳・表田裏道である。番組では洗練された“お兄さん”を演じているものの、その作り上げた顔は、自身の陰鬱なまでに正直な本音によってたびたび崩れていく。カメラが回っている最中でさえ、彼は子どもたちや周囲の人々を大人の厳しい現実へと引き戻さずにはいられず、何気ない教訓や体操のコーナーを、乾いた苛立ちに満ちたデッドパン・コメディへと変えてしまう。
舞台裏では、番組でウサギとクマの着ぐるみを担当する後輩の兎原跳吉と熊谷みつ夫が、何かと問題を起こし、裏道のかろうじて成り立っている日常をたびたびかき乱す。歌のおねえさん・多田野詩乃と歌のおにいさん・蛇賀池照もまた、それぞれのかたちで大人の不幸を現場に持ち込む存在である。詩乃は結婚することしか頭にない女性であり、池照は下品なユーモアのセンスを持つ美男子である。喫煙や運動に明け暮れ、絶え間なく虚無的な言葉を吐き出しながらも、裏道は大人の人生にある、あまり道徳的とは言えない側面について苦い教訓を語り続ける。そして、番組の無垢な空気と、すっかり擦り切れたスタッフたちとの落差こそが、本作の最も鋭いユーモアを形作っている。