『月がきれい』では、中学最後の学年である3年生になったクラスメイト、安曇小太郎と水野茜が、初めてきちんと向き合うことになる。小太郎は作家志望、茜は陸上部員であり、二人は当初まったくの他人同士である。川越の体育祭で用具係を任されたことをきっかけに、気まずい偶然の出会いはLINEでの私的なやり取りへと変わり、静かな関心はやがて初恋の芽生えへと移っていく。何気ない学校生活も、ひとつひとつのささやかなやり取りに新たな意味が宿ることで、これまでとは違って感じられ始める。
関係が少しずつ形を取り始めるにつれ、小太郎と茜は、初恋の高揚と不確かさ、自分でもまだうまく理解しきれない感情、そして周囲の視線に向き合っていく。拓海は以前から茜に思いを寄せており、西尾千夏もまた小太郎に関心を抱き始めることで、二人のあいだの繊細な距離はさらに揺らいでいく。美しい満月の光の下、本作は、胸が高鳴るような期待から思いを言葉にするための勇気に至るまで、若い恋心をかたちづくる小さくはかない瞬間を丁寧に見つめている。『月がきれい』は、結びつき、傷つきやすさ、そして恋がもたらす変化の力を描いた、穏やかで感情に誠実な青春恋愛物語である。