『お嬢と番犬くん』は、5歳で両親を亡くし、その後ヤクザ一家の組長である祖父・瀬名垣太助に育てられた瀬名垣一咲を描く作品である。そのつながりによって自分を規定されたくないと決意した一咲は、高校進学を機にやり直し、ごく普通の友人を作り、ほかの10代と同じように恋をしたいと願う。しかし、その新たな出発は、長年彼女を見守ってきた26歳の世話役・宇藤啓弥の存在によって複雑なものとなる。
啓弥は組長の孫娘である一咲を過剰なまでに守ろうとするあまり、学校側に賄賂を渡して自らも一咲の通う学校に入学し、彼女が普通の学校生活を送ろうとする試みを、距離感と自立をめぐる絶え間ない葛藤へと変えてしまう。さらに事態をややこしくしているのは、一咲が啓弥に片思いをしており、その恋が報われることを強く望んでいる一方で、啓弥は彼女を自分が育ててきた孫娘としてしか見ていないことである。啓弥の過保護さと一咲の境界を顧みない振る舞いが彼女を何度も引き戻すため、前に進みたいという一咲の願いはますますかなえがたいものとなり、高校生活とヤクザ一家のしがらみが形作る一風変わった恋愛へと巻き込まれていく。