『Lycoris Recoil』は、表向きには安全な日常が保たれている日本を舞台に、秘密組織・Direct Attack(DA)が、リコリスと呼ばれる孤児の少女たちを工作員兼暗殺者として影で活動させることで犯罪を抑え込んでいる物語である。シリーズの中心となるのは、任務に対する考え方が大きく異なる二人のリコリス、井ノ上たきなと錦木千束であり、その違いは二人をすぐにDAの厳格な指揮系統の外へと押し出していく。
人質事件でたきなが命令に背いたことで、DAは彼女を現役任務から外し、非公式の活動拠点を兼ねる喫茶店「LycoReco」へ送る。そこで彼女は、非致死的な解決を好み、客の雑用を手伝って過ごすことの多い、名高いリコリスである千束と組むことになる。この関係を通じて、たきなは疑いもなく従ってきた規則を見直すことを迫られ、いっぽうで千束の飄々とした表の顔の裏には、周囲のすべてを形づくるより深い覚悟が隠されている。
二人が喫茶店に寄せられる依頼に応じ、さらに大きな対立へ巻き込まれていくなかで、『Lycoris Recoil』は静かな人物描写と高まる緊張感を両立させる。DAの苛烈な規律と、千束の人を殺さないという姿勢の対比が物語の中核をなし、たきなと千束は、暴力、忠誠、そして自分たちが築きたい未来に向き合うことを迫られていく。彼女たちの暮らす世界の穏やかな表面が、少しずつひび割れていくのである。