『クジマ歌えば家ほろろ』は、秋に始まる物語である。中学1年生のコウダ・アラタは、異様な食欲を持ち、思いがけない場所に現れる奇妙な鳥のような生き物・クジマと出会う。アラタはクジマに食事をさせるために家へ連れて帰り、家族の誰も予期していなかったこの客は、やがてコウダ家に居着くことになる。
寒さが増すにつれ、クジマとの日々は、もともと危うかったコウダ家の均衡を揺さぶっていく。入試に落ちたアラタの兄も家庭内の緊張を強め、クジマの予測不能なふるまいは、ありふれた日常をいっそう奇妙で、いっそう滑稽で、いっそう繊細なものへ変えていく。クジマは、厄介者のようでもあり、好奇の対象のようでもあり、時には仲間のようでもある。
ともに食卓を囲み、少しずつ変わる暮らしの習慣に触れ、そして来訪者がいつまで家族の一員のようにそこにいられるのかという落ち着かない問いを通して、『クジマ歌えば家ほろろ』は、秋が春へと移ろうなかで、人の優しさ、不快さ、そして人々が共に生きることを少しずつ学んでいくあり方を描く、静かで風変わりな家庭劇である。