『十二国記』は、ただ普通でありたいと願う高校生・中嶋陽子から物語が始まる。彼女は勉学に励み、学級委員長を務め、できる限り級友を助けようとするが、赤い髪は周囲の中で彼女を目立たせ、格好の標的にもしてしまう。人を信じすぎ、相手に譲りすぎる性格のため、心から支え合えるような友情を築けずにきた。そんな陽子の平凡な日常は、異界から来た端整な金髪の男・景麒が教室に現れ、彼女の前にひざまずいたことで一変する。景麒は陽子を主と呼び、彼の国の王座に就くべき存在だと告げるが、その真相が明かされる前に妖魔が襲来する。景麒は陽子を伴って自らの世界へ逃れるものの、級友の浅野郁也と杉本優香もその混乱に巻き込まれ、ほどなく彼と離ればなれになってしまう。
ひとつの過ちが命取りになりかねない見知らぬ土地に取り残された陽子たちは、かつて知っていた日常を失ったまま、生き延びる術を学ばなければならない。こうした苛烈な幕開けを起点として、本作は陽子の最初の試練にとどまらず、諸国の王権と宮廷、相反する忠誠が錯綜する、より広大な幻想世界へと展開していく。その過程で、楽俊、尚隆、延麒、泰麒、祥瓊、玉葉といった人物たちが物語に加わる。そうした交錯する物語群を通して、『十二国記』は、なぜ自分が選ばれたのかを理解しようとする陽子の苦闘、異郷の苛酷な現実に耐える歩み、そして生き残るためには従順さや善意だけでは足りない状況の中で、自らがどのような人間になるのかを決めていく過程を描いている。