『ベン・トー』では、近所のスーパーマーケットが毎夜の戦場と化し、半額の弁当が「狼」と「犬」との苛烈で儀式化された争奪戦の賞品となる。一見すると普通の買い物に見えるその光景は、やがて速度、持久力、そして誇りが試される勝負へと変わり、すべての売り場が、勝者は腹を満たして帰り、敗者は空腹のまま去る闘技場となる。
物語は、半額セールにまさに最悪のタイミングで居合わせてしまった高校生・佐藤洋を軸に進む。彼はその奇妙な裏社会に足を踏み入れたことで、やがて戦いを支配する掟と、それに生きがいを見いだす人々に強く惹かれていく。彼をその世界へ導くのは、有望株と目される実力者の先輩で「狼」の槍水仙と、乱闘を眺めるのを好む白粉花であり、二人は彼を「半額弁当同好会」へと迎え入れる。佐藤は槍水の指導のもと、「狼」と「犬」とを分けるルールや対立、そして苛烈な作法を学び始める一方で、夕食をめぐるばかげた戦争は、彼の度胸、誇り、そして食欲を絶えず試し続ける。